経済のガラパゴス化は大規模経済においては一定の頻度で発生するし消費者にとっては好ましいことである

2012年1月28日

一行要約:経済のガラパゴス化は経済規模が大きな国では防ぎようがないし、少なくとも消費者にとっては好ましい現象である。

消費者のニーズは国ごとに違う。カナダと米国は似ていると思われるが、カナダと日本の場合は一定の違いがありそうである。その国毎に違うニーズを満たすために生産者は必要に応じて製品を開発したりカスタマイズして販売する。ここで自国の消費者のニーズが効率的に満たされる国と満たされない国がでてくる。

自由主義経済で競争が激しい国は消費者のニーズにあった物やサービスが素早く適切に供給されるようになるだろう。また、人口が多くて経済規模が大きいほど生産者としてもその国向けの製品を開発したりするインセンティブが高いだろう。市場が大きいほど潜在顧客が多いということであり、市場が大きいとより多くの売上が期待されるし投資が正当化される。多くのお金が研究開発に費やされ、また多くの起業家や研究者が自分の思考時間を大きな市場で成功することに費やす(参考:詳細:技術革新と投資量は市場規模に比例する)。

実際、往々にして経済規模が大きい国において特殊な市場環境が観察される。アメリカの自動車会社は燃費の悪い大型な車を作り続けているが、そういった車がアメリカ人消費者のニーズに合っているからこそアメリカ車は(消費者評価では常に上位にいる日本車や欧州車を抑えて)市場シェアのトップを占めている。しかしそんなアメリカ車がアメリカ以外の市場で売れているケースはほとんどない。小売業は車社会と広大な土地を背景にしたウォルマートがトップを走るが、そのビジネスモデルが海外消費者に合っているとはいえない状況である。ウォルマートは海外店舗も売上も増えているが、アメリカ国内の業態が海外で通用している状態ではなく、営業利益でいうと米国内の173億ドルに対して海外事業は34億ドルにとどまる(2020年1月期のデータ)。

中国のIT市場は世界トップクラスであることは疑いないが、世界標準とはちがった形態に発展しているのは明白であろう。これは中国の優秀な起業家と技術者(と政府規制)の賜物ではあるがそれだけでなく、大きな市場から生み出される売上と利益があれだけのエコシステムを生んだと言える。

そして、ガラパゴスというのは消費者のニーズに合った商品を提供できる生産者が存在するという意味で、消費者にとっては好ましい現象である[1]日本の酒税や軽自動車規制など、政府の規制によって発生したガラパゴス化現象は例外である。。ガラケー時代はガラケーを使い、スマホ時代にはスマホを使っている日本人消費者は21世紀において最も豊かなモバイル体験ができていると言えるだろうし、アメリカ人は自分達のニーズに合った車を運転できて満足度が高いと言える。

結論として、消費者の嗜好が国や文化によって違うかぎり、生産者がそれに合わせるのは自然の摂理であり逆らうことはできない。特に競争がある社会では自分達が消費者に合わせなかったら競合他社がやってしまうというプレッシャーもある。そして顧客のニーズに合った物やサービスが売られている社会というのは消費者にとっていい社会であると言える。

References

1 日本の酒税や軽自動車規制など、政府の規制によって発生したガラパゴス化現象は例外である。