2021年2月5日
2019年のデータでサッカーチームに所属している小学生は約27万人いる[1]https://www.jfa.jp/about_jfa/organization/databox/player.html。野球チームに所属する小学生は約12万人[2]https://halftime-media.com/sports-market/japan-baseball-1。これだけの小学生に影響があり、かつ教育的にも問題があるサービスが提供されつづけているとすれば社会問題と言えるだろう(なお、ここでいう少年スポーツは小学校の校庭を借りて活動しているような野球やサッカーを想定している)。
少年スポーツチームは小学校内で独占的状態になりやすい。理由は小学生は大人に比べて生活圏が小さく移動距離が極端に短いからである。小学生が練習のために週に何回も隣の学区までわざわざ移動するのは時間的・心理的コストが高いし、なんと言っても安全面で不安がある。結果として選手は基本的に自分の小学校にあるチームに参加するようになり、チームが学区外から選手を受けれることはあまりない。九州電力が九州地域のみを対象にビジネスしているように、少年スポーツチームは一つの学校の生徒だけを対象にしているということである。これは実質一つの学区を対象とした地域独占に近い。
生産者が独占状態にある時、提供されるサービスは価格が高くなり、質は低くなる。少年スポーツでも同じような傾向がある。
質が低いサービス:少年チームではコーチ達の指導スキルが低すぎて怒鳴り声でしか指導できないケースが往々にしてある。小学生が怒鳴られながら練習し、それが理由で自尊心を失ったりスポーツをやめるケースもある。さすがに最近は体罰するコーチは少なくなったが、それでも指導者が適切に指導しているとはいい難い状況であり教育的にも好ましくない。
労働で支払う高価格(主に少年野球):少年チームの月謝そのものが高いケースは少ない。だいたい都内のチームでも一月あたり4,000円前後だ。しかしチームによってはお茶当番(選手の保護者が練習や試合でお茶出しを始めとする世話をすること)を強制的に課されることがある。月に5時間のお茶当番をした場合、仮に時給2,000円を仮定して金銭換算すると1万円の追加コストになる。お茶当番の回数が増えれば負担はもっと上がる。
参考URL
筒香嘉智が語った、少年野球における「母親の問題」と「お茶当番」
「怒鳴る」に待った、「伸び伸び」にも注意 元大リーガー岩村明憲氏が語る指導論
スポーツ少年が苦しむ「暴言指導」の過酷実態
みんなドン引き。怒鳴るコーチどうするんだ問題
独占状態にある生産者(この場合は地域のスポーツチーム)はそのままではなにも改善しない可能性が高い。そういう状況では外部からの規制や制限が重要になってくる。その点、日本サッカー協会は一定の改善努力をしていると言える。日本サッカー協会は暴力等根絶相談窓口を設け、暴力だけでなく暴言や威圧行為があった事象の報告を受け付けている[3]JFA暴力等根絶相談窓口 http://www.jfa.jp/violence_eradication/。また地域にもよるがサッカー大会があった時には暴言等がなかったかについて報告する必要がある[4]https://jr-soccer.jp/2019/12/18/post118787/。逆に少年野球を統括する全日本軟式野球連盟が具体的なアクションをとっているという話は聞かない。近年の少年サッカーの競技人口は横ばいだが、少年野球は年々減少しているのはそれが一因といえるだろう。
2007~2016年にかけて、小・中学生の野球人口は66万3560人から48万9648人と、26.2%減少(出典:全日本野球協会)。同期間のサッカー人口は51万8808人から54万9962人と6%の増加だった(出典:日本サッカー協会)。少子化の6倍のペースで野球少年は減少している。
https://toyokeizai.net/articles/-/298683?page=2
協会の対策が充分でない場合や自助努力がみられない場合は自治体や教育委員会からの指導も必要だろう。市民の資産である公立学校のグランドで子供の教育上好ましくない活動が行われている状況を是正するというのは学校や教育委員会の責務の範疇だと思われる。サッカー協会のように相談窓口を設けるもいいし、グランド貸し出しの条件に指導方法や保護者の負担について一定の条件をつけてもいい。大事なことは独占スポーツチームは外部からの関与がないかぎり変わらないという認識を社会がもつことである。