水上輸送は船による輸送であり、輸送ルートは海も川も運河も含む。水上交通は陸上輸送よりも効率的であり、これは現代においても歴史上の世界でも変わらない。歴史における水上輸送の効率性は十分に認識されてないようなので簡単にまとめておきたい。
- 水上輸送の重要性を最初に提唱したのはアダム・スミスである。有名な国富論の第三章は市場の大きさと分業についてだが、内容の多くが水上輸送の重要性とそれによって拡大される市場と分業についての分析になっている。スミスは200トンの貨物をロンドンとエディンバラ間で輸送するケースを比較し、陸上輸送の場合は100人の御者と400頭の馬と50台の大型馬車が必要だが、水上輸送の場合は6-8人の水夫と一隻の船で十分だとしている[1]国富論(中央文庫)、P33。
- 1761年、英国のワースリにある炭鉱からマンチェスターまで運河が敷設された(ブリッジウォーター運河と呼ばれる)。この運河により、それまでは陸路で運ばれていた石炭が運河を通じて運搬されるようになったが、運河輸送は大幅に効率的だったためにマンチェスターの石炭価格が半分に下がったと言われる[2]Wikipedia: Bridgewater Canal https://en.wikipedia.org/wiki/Bridgewater_Canal。また、一般的に当時の運河の建設は同じ区間の輸送コストを7割くらい削減したと言われている[3]Wikipedia: 運河時代 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E6%B2%B3%E6%99%82%E4%BB%A3。
- フェルナン・ブローデルは地中海貿易の輸送効率を計算して水上輸送は陸上輸送にくらべて7-8倍程度効率的だとしている。
- 水上輸送の優位性はヨーロッパだけに限った話ではない。スミスは古代エジプト、インドのベンガル地方、中国沿岸地域においても水上輸送が効率的だったと書いている。また、イスラム商人が使っていたダウ船はラクダ600頭分の輸送能力があったと言われている[4]参考:https://sekainorekisi.com/world_history/%E6%9D%B1%E8%A5%BF%E3%82%92%E7%B5%90%E3%81%B6%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A0%E5%95%86%E4%BA%BA/
- 江戸期の日本についても水上輸送は効率的だったし、ある程度のデータも存在している。江戸期の輸送機関毎の輸送量と必要人員をまとめたのが以下の表になる。この表にある輸送量(米俵)を人員で割った一人あたりの俵の輸送量を計算すると、菱垣廻船と樽廻船が50俵/人、川舟が45から70俵/人、馬や荷車が2から3俵/人になる。
References
↑1 | 国富論(中央文庫)、P33 |
↑2 | Wikipedia: Bridgewater Canal https://en.wikipedia.org/wiki/Bridgewater_Canal |
↑3 | Wikipedia: 運河時代 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E6%B2%B3%E6%99%82%E4%BB%A3 |
↑4 | 参考:https://sekainorekisi.com/world_history/%E6%9D%B1%E8%A5%BF%E3%82%92%E7%B5%90%E3%81%B6%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A0%E5%95%86%E4%BA%BA/ |